ひと恋めぐり

19 5月

海という言葉で、思い出す風景は、子供の頃、潮騒の音で、朝早く目覚めた海辺のテント。

朝靄に煙る水平線から昇ってくる太陽。

修学旅行のとき、普段はなんでもなかったんだけど、旅の間だけ親密だった僕あいつとあの子、青函連絡船の外の海。

朝早くに着いた、誰もいない須磨海岸。

恋のせつなさと、海岸通りのウエザーリポート。

眩しく晴れた空と、真っ青なエーゲ海。

つきせぬ夢と失望の繰り返しだったあの頃。

言葉もわからないまま、嫁さんとパリから電車やバスを乗り継いで、やっと着いたモネの描いたエトルタの海岸。

波打ち際ではしゃぐ息子を見つめた南伊豆の砂浜。

もともと山育ちの僕は、そんなに海と関わる機会が多くなかったせいか、良い思い出ばかりなのだろうか?

「柴咲コウ」さんの新譜「嬉々」の中の1曲「ひと恋めぐり」を聴きながら、そんな海の事を思い出してしまった。

女優としての「柴咲コウ」さんも好きだけど、歌い手としての「柴咲コウ」さんも、独自の世界を持っていて、何かしら切々と訴えかけてくる。

結構、長く生きて来たから、辛い事をやり過ごす方法も身に付けたし、おんなじ失敗をしないという事も学んだと思う。

それでも、そんな小さな幸せは一瞬の隙に崩れ去るものであるという事も、事実として知っている。

だから、必死に前に進めるのかもしれない。

せめて歌だけは優しく包んで欲しい。

その声で背中をそっと押して、また歩いていけるように、、、

2007/05/19