海という言葉で、思い出す風景は、子供の頃、潮騒の音で、朝早く目覚めた海辺のテント。
朝靄に煙る水平線から昇ってくる太陽。
修学旅行のとき、普段はなんでもなかったんだけど、旅の間だけ親密だった僕あいつとあの子、青函連絡船の外の海。
朝早くに着いた、誰もいない須磨海岸。
恋のせつなさと、海岸通りのウエザーリポート。
眩しく晴れた空と、真っ青なエーゲ海。
つきせぬ夢と失望の繰り返しだったあの頃。
言葉もわからないまま、嫁さんとパリから電車やバスを乗り継いで、やっと着いたモネの描いたエトルタの海岸。
波打ち際ではしゃぐ息子を見つめた南伊豆の砂浜。
もともと山育ちの僕は、そんなに海と関わる機会が多くなかったせいか、良い思い出ばかりなのだろうか?
「柴咲コウ」さんの新譜「嬉々」の中の1曲「ひと恋めぐり」を聴きながら、そんな海の事を思い出してしまった。
女優としての「柴咲コウ」さんも好きだけど、歌い手としての「柴咲コウ」さんも、独自の世界を持っていて、何かしら切々と訴えかけてくる。
結構、長く生きて来たから、辛い事をやり過ごす方法も身に付けたし、おんなじ失敗をしないという事も学んだと思う。
それでも、そんな小さな幸せは一瞬の隙に崩れ去るものであるという事も、事実として知っている。
だから、必死に前に進めるのかもしれない。
せめて歌だけは優しく包んで欲しい。
その声で背中をそっと押して、また歩いていけるように、、、
2007/05/19
ひと恋めぐり
19
5月