もう一度夜を止めて

2 6月

どうして人は大切な事を忘れてしまうのだろう。

これだけは忘れずにいようと思う事すら忘れてしまっている。

いつのまにか6月になった。

ジューンブライドの6月。

春と夏の間、梅雨のちょっと前。

夜中に目が覚めて、忘れていた大好きな歌が聴きたくなり、CDのラックや、そこからあふれたCDを積み上げている廊下を探した。

いろんなCDタイトルに、ああ、こんな歌もあったと思い出しながら、数年前に再発されたベスト盤「崎谷健次郎」をやっと見つけ出した。

ノートパソコンのCDドライブにディスクを入れて、ヘッドホンをかけ、1曲目の「もう一度夜を止めて」を再生する。

その瞬間から、僕は10数年前の切なさの中に戻っていった。

あの、大阪の帝塚山で客の殆んど来なかったカラオケスナックで働いてた頃を、、、。

当時流行っていた歌は安全地帯や、久保田利伸のMISSINGとかだったけれど、僕の18番は崎谷健次郎の「もう一度夜を止めて」だった。

もともとは腕時計のCMソングでTVでオンエアされていた曲だった。

当時よく遊んでいた仲間の消息も、東京に越してきた10年前に途切れてしまい、今はもうわからない。

あんなに毎日のように車で通っていたドライブコースの風景も、この歌を聴くまですっかり忘れてしまっていた。

10数年たっても、この歌で歌われている内容はやっぱり胸を切なくする。

あの日々の生活から、いまの嫁と二人でさよならし、時間も環境も変わり、やがて、現在の自分がある。

そんなことを考えると、忘れないということだけが失ってしまったものへの供養じゃないと思う。

そして、夜中にふと懐かしい歌声に耳を傾けるのも悪くない。

2006/6/2