リアウインドゥのパームツリー

3 2月

あの頃にもう一度戻りたいとは思わない。

けれど、心の中の大切な何かを、あそこに置いてきてしまったような気がする。

圧倒的な日常の繰り返しは、今も昔も変わりなく続いている。

人は誰でも上手に今日から明日を生きるために、自分自身、何かしらのおまじないを持っていると思う。

ある時はじっと身を潜めて、嵐が過ぎるのを待ったり、二度と立ち直れないかもという辛い日々でも、いつか、うららかな日差しの春が来る。

「彩恵津子」さんの「リアウインドゥのパームツリー」を聴くと、なんとなく、そんな事を考えてしまう。

友達以上に好きでも、恋人にはなれなかった二人、いつかの時点で二人の道は別れてしまう。

最後に二人は海までドライブをするんだけれど、思い出のその海も二人の別れをとめられなかったね、という歌。

透き通った「彩恵津子」さんの声は、映画を見るように、それらのシーンを歌っている。

きっと、その海は南の島にあり、早春の冷たく澄んだ青空の下、どこまでも続く誰もいない砂浜。

やがて、別な形の幸せを手に入れた未来に、二人はあの頃をどんな風に回想するのだろう?

不器用でもいい、カッコつけなくたっていい、倒れたら、しばらく眠ってしまったっていい。

そのうち、お腹もすくし、誰かが声かけてくれるし、きっと、季節は春になる。

そう信じる、それが僕のおまじない。

2007/02/03