夢の夜明け

3 12月

久しぶりの晴れた日曜日の午前11時、下北沢の磯やんのアパートに遊びに行くことにした。

自宅から小田急線の祖師ケ谷大蔵駅まで徒歩で約15分、庭先の紅葉した木々と、青空に浮かぶ白い雲を楽しみながら歩いた。

そして、祖師谷大蔵駅から区間準急に乗り下北沢で降りる。

ちょっと早めに着いたので下北沢を歩いてみよう。

駅前のホットペッパーや、なんかのティッシュ配りを断って、MP3プレーヤーでHands two HandsのDear Friendsを聴きながら

騒音をシャットアウトして右斜めに坂を下りてゆく。

楽しげに行き交う恋人たちや、グループでショッピングする女の子。

店のディスプレィにはクリスマスらしい飾り付け。

磯やんの朝食(きっと起きたばかりなはず)にと思って、坂の途中にあるアンゼリカというパン屋さんで、いつものようにみそパンを3個買う。

磯やんは磯崎雅彦といい、GRAYの「永遠の1/4」という本を書いたライターで、大阪で一緒にバンドをやっていた友達でもある。

今日はもう一人、こーやちゃんも来るので、3人で高井戸にある「美しの湯」という温泉にいこうと思っている。

こーやちゃんも大阪でのバンド仲間でドラムをたたいていた。

今は文房具メーカーの製造ディレクターをやっている。

一度、3人ともバラバラになって、何年か前に東京で再会した。

昔は寝食を共にした僕たちだったけれど、今は電話で話したり、本当に会って何かするのは年に数回ぐらいになってしまった。

バンド・デビューを夢見た若者の成れの果てだね、、、、

そんな事を考えながら下北沢の街歩く。

BGMはHands two Handsの「夢の夜明け」

悔しいけれど、どんどん切なくなってくる、いい曲。

始まりは何気なく、後半になるにつれて、切々と訴えかける歌である。

坂道の下でUターンして、一度駅前に戻り、井の頭線に平行する陸橋を渡って西口にぬけた。

踏切の横には誰かを待っているらしい女の子。

セブンイレブンの前を左折してしばらく歩くともうすぐ磯やんのアパートが見えてくる。

昔、バンドのリーダーであんなにしっかりしていた磯やんが、最近、「もう人生、いいかなーって思うんだ」と弱音を吐く。

みんな大人になってしまったから、僕やこーやちゃんは、元気づけるために「温泉にいこー」ってしか言えない。

ねえ磯やん、時間は僕たちの周りで早く流れてしまったけれど、まだ何にも始まってないし、とりあえず温泉いこーね!

akinososigaya