東京未明

7 2月

「alan」さんが歌う「東京未明」は、東京に出て来て間もない、心細い若者の気持ちをせつなく歌っているんだと思う。

僕自身にも確かにあったその気持ちは、どうにか東京で暮らす大人の形を真似出来るようになった今でも、痛いほど心に突き刺さるものがある。

故郷の母が2週間後に入院する事になってしまった。

1年以上も帰省してないし、とりあえず自宅にいるうちに母とゆっくり話がしたいと思い、金曜日の夜、夜行バスに乗った。

東京駅の八重洲南口を夜11時30分発、盛岡バスセンター行きに乗り、朝方6時頃目覚めると、雪の金ヶ崎付近を走っていた。

ニュースによると、昨日までは暖冬の影響で雪もなかったそうだけど、こんな形で帰省し、雪景色を見るのは複雑な気持ち。

今回は嫁さんも息子も東京に残し、単身の帰省なので気楽と言えば気楽で、学生のころ帰省していた感覚をすこしだけ思い出した。

いつも、東京と故郷の行き来の道中では、色んな事を考えてしまったものだけど、最近、新幹線が出来てあっという間に(まあ、それでも3時間弱はかかるけど)着いてしまうので、色々考える時間がなくなってしまった。

盛岡に7時過ぎに到着したんだけれど、弟と入院する母が元気に(といったら変なんだけど)車で迎えにきてくれていた。

母の病気は、いってみれば、現在は普段の生活には全く支障がないものだけど、通院治療より、体力のあるうちに入院したほうがいいといった感じで、本人は覚悟を決めてしまっているけど、周囲の僕や弟がオタオタしてしまっている状態。

田舎に帰って、結局、何をする訳でもなく、でくのぼうのように母の作る食事の準備の手伝いをしたり、こたつに入って弟が再生する海外ドラマのDVDを延々とみて、いつのまにか昼寝してしまっていたり、まったり過ごした。

そして、久しぶりに、台温泉の精華の湯にみんなで入りにいった。

湯船から見上げると、青空から白い雪がちらほら落ちている風景が見えた。

これが幸せ、この短い瞬間を持てた事は、ほんとに幸せだと想う。

何となく、帰りは、新幹線でなく、東北本線のH市駅から乗りたくなって、18時半ばの普通列車を待っていると、日曜とはいえ、沢山の学生達が同じ列車に乗った。

そういえば、家を出るときも、この駅から出発したんだっけ。

ああ、まだまだいっぱい親孝行したりない自分が情けない。

そして、盛岡からはやてに乗って、2時間半で、僕は第2の故郷、東京に着いてしまった。

東京未明、聴こえる 違う誰かの靴音
急ぎ足で景色は変わる

悲しみ置き去りにして何処へ行くのこの道 私、
うまく笑えないよ

いつの間にか夜に包まれて 一人言う
「東京」

(東京未明 作詩:御徒町凧 作曲:菊池一仁)

あれから一週間、弟から、今日、母が入院したとメールが届いた。

2009/2/7

夕暮れの東北本線H市駅
故郷を出たあの日もこうして線路の行方を見ていたっけ。
台温泉精華の湯です。